【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
理不尽な運命に雫が溢れる。
勢いよくガラリと音を立てながらドアを開ける。
「───藤村先生!いますか?!」
走って辿りついたのは美術準備室。
突然息を切らしながら登場した私に先生は目を丸くした。
「藤村、先生・・・!いた、よかった・・・!」
「そんなに慌ててどうしたんだ。廊下すっごい音してたぞ」
「す、すみません・・・じゃなくて、!先生、その絵・・・!」
藤村先生が持っていた一枚の絵。
───そこには向日葵を背景に宏海さんの姿が描かれているものだった。
彼女をどこかで見覚えがあったのは、この絵だったのだ。学生時代に描いた絵を見せて欲しいと先生に頼んで見せてもらったことがあった。
やはり宏海さんの想い人は私の予想通りだった。しかし間違いじゃなかったと喜ぶよりも先に、彼女の時間がないと焦りばかりが募っていく。
「その人って、宏海さんですよね。同級生って先生のことだったんだ・・・」
「・・・なんで小泉がその名前を知っているんだ」
先生はここの卒業生。そして当時は美術部員。
フルネームは藤村朔太郎───学生時代の時はサクタロウって長いから友人には上の2文字から取って「サク」と呼ばれていたと言っていた。
こっそり見てしまった過去の卒業生のアルバムには前の制服を身に纏った先生が写っていたし、何より年齢を逆算したら宏海さんと同級生の年代である。
美術室に彫ってあった「H.K」と「サク」の名前、宏美さんと藤村先生のことだったのだ。