【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
私は幽霊という存在を全く信じていない訳ではない。
肯定する根拠も否定する根拠も霊感が今まで無かった私には幽霊の存在有無かなんて決め付けることが出来ないからだ。
「初めての経験で戸惑ってはいますけれど」
夏の季節になれば特に心霊番組も沢山放送されているし、もはや心霊映像を作成して提供する会社もあると聞いたことがある。幽霊を信じていない視聴者でも盛り上がれる一種の娯楽に過ぎない。
しかし友人の中にはそういうことに敏感な子もいたし、その子が話すこと全てが嘘だと決めつけるまたその根拠もない。心霊映像だって科学的なもので説明できない現象もあるのだ。
「どう?初めて幽霊を見た感想は」
「意外と饒舌なんだなって思いました」
「あら面白い回答ね。そういうの好きよ、私」
だから幽霊の存在の有無は結局うやむやになって終わる。その方がテレビ的には盛り上がるからそれはそれで良いのかもしれないけれど。
「ふふ。懐かしいわ、全然変わってないのね」
幽霊さんはくるりと美術室を見回して、窓の縁へ手を掛けると校庭に咲いている向日葵を見下ろす。身体が半透明だからか、その表情はどこか儚く感じる。
どこか見覚えがあるようなそんな既視感を覚えながら、その姿を私は後ろから眺めていた。
「どうしても美術室に来たくって。当時は一応部長だったのよ」
「美術部・・・な、なるほど」」
彼女が身に纏っているのは赤いスカーフのセーラー服。それが高校の少し前の制服だったことを思い出した。確か私が入学したと同時に今のデザインと色に変わったのだ。
どうやら小坂宏海さんはこの学校に通っていた先輩で、さらには美術部OBだったらしい。