【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「わあ、凄い! あの子?」
「可愛い子じゃない? さすが聖女様!」

 最初は驚いた顔をしていたモーリーンは、神官に何か言われると、人々に向かって手を振りはじめた。
 堂々とした笑顔だ。
 さすが、『花のモーリーン』。確かに明るくて人目をひくモーリーンなら、聖女に選ばれても納得できる……。

 一緒に生まれた双子だけれど、立っている場所はどんどんと離れていく。
 人の輪の中心で手を振る美しい妹と、群衆の陰に隠れて妹を見つめる陰気くさい姉。
 少し切ない気持ちになりながら、わたしもモーリーンに拍手を送った。





 * * * * *





 聖女誕生の知らせに、街はお祭り騒ぎだった。
 次代の聖女が見つかったことだけでも吉報なのに、この街から聖女が顕れたのだ。

 我が家にもひっきりなしにお客さんが訪れ、神殿から支給された支度金で祝い酒が振る舞われた。

「めでたいねぇ。モーリーンちゃんが聖女様だったとは!」
「これで王国も安泰だ」
「ありがとうよ」

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