【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「最初は狼の小さな怪我まで気にするおまえの優しさや、無邪気な愛らしさに惹かれた」

 わたしの頭のてっぺんに、優しい口づけが降ってくる。

「それから、自分を陥れた人間達すら思いやる慈愛の深さや、せめて立派な聖女になろうと一生懸命なところも。気づいたら、どんどん大切な存在になっていった」

 わたしの黒髪をひと房手に取り、まるで神聖な誓いのようにそっと唇を寄せる。

「だが、自分の人生は自分で決める、強くなりたいと言ったマリアーナは、今までで一番輝いていた」

 そして、わたしと真っ直ぐに目を合わせた。
 何かを迷い揺れていた金色の瞳は、今は覚悟を決めたように力強かった。

「マリアーナには三つの道がある。聖女となる道、普通の女性に戻る道、俺とともに在る道だ」

 三つの道……。

 一つめは、初夜の儀で国王に女神の加護を与え、国王の寵愛を受け、国を守護する聖女として生きる道。
 わたしひとりが犠牲になれば、国も人々も守ることができる。
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