【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「クゥン」

 ヴォルフは不満そうだ。
 単に強大すぎる神力を調整するのが面倒で、月のない夜を選んだだけだろう、とでも言いたそう。

 その時、遠くにぽつりと光が見えた。
 月でもなく星でもない。
 小さいけれど、はっきりした白い光が一つ、木々の間を縫って近づいてくる。

「聖なる水晶……」

 洞窟の中で、女神様がおっしゃっていた。聖なる水晶の本体が近くまで来ている、と。
 あれがたぶん復活した水晶なのだろう。
 聖なる水晶を羅針盤にして、人間達が追ってきているのだ。

 あの人達がここに着いたら、今日が終わる。





 あなたと過ごした毎日を、わたしは絶対に忘れないわ。
 それは誰にも奪えない、わたしだけの宝物。





 夜が終わる。



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