【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
6.国王陛下との再会
ヴォルフはいつの間にか姿を消していた。
わたしは独り、森より少し高い崖の上から、聖なる水晶が近づいてくるのを見つめる。
時折木々の枝の影に隠れて明滅する白い光は、近づくにつれどんどん明るさを増していく。
聖なる水晶の周囲には何人か、集団になった人間がいるようだった。光に照らされる人影と、小さなざわめき。
おそらく水晶の反応を見ながら、聖女を追ってきているのだ。
「うわあっ! 聖なる水晶が」
「また聖なる水晶が割れてしまうぞ!」
男達がわたしの立っている崖の下にたどりついた時、叫び声がした。
水晶が灼熱の太陽のように強く光り、薄く煙が上がりはじめる。
「聖なる水晶を遠ざけよ! そこの神官、早くここを離れるのだ!」
水晶を抱えた神官と思われる男が慌ててこの場から走り去る。
だいぶ離れたところで水晶から放たれる光が少し弱まり、その神官は立ち止まったようだった。
「……聖女様! そこにいらっしゃるのは聖女様でしょうか?」
崖下に留まった男達のひとりが、わたしに声をかけてくる。