【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「陛下! どうぞ頭を上げてください」
「では、私の願いを叶えてくれるのか?」
「わたしはもとより、いったん帰郷するつもりでした。聖女の件も陛下ときちんとお話したいと思っておりました。だから、もう……」
「そうか、感謝する。あなたは変わらず謙虚なのだな」

 陛下はふっと苦笑した。
 みんなに離れたところで待機するように命じ、わたしと陛下は焚き火の前の椅子にふたりで座り直す。

「モーリーンにだまされ、あなたを傲慢な悪女だと信じてしまうなど……、私も焼きが回ったものだ」
「あの、モーリーンは今……?」
「あの娘は聖女継承の儀のあと、聖宮に幽閉した。まだ事情は話していないし、処分もしていない。騒がれても困るのでな」
「そうですか……」

 とりあえず惨いことにはなっていないようでほっとする。
 冷めてしまったお茶をひと口飲み、横に並べた椅子に腰かけた陛下を見ると、陛下はじっとわたしを見つめていた。

「あなたを助けたという者は?」
「え?」
「どこにいるのだ。この深い森に、独りで住んでいたわけではあるまい」
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