【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
7.王都への帰還
近くの街に待機していた馬車に十日以上揺られ、ようやく到着した王都は、以前と変わらず人々でにぎわっていた。聖女不在の影響がそれほど出ていないようでほっと息を吐く。
初めて王都に来た時と同じように、大神殿で国王陛下とはお別れだ。
「今度こそ儀式が滞りなくすみ、無事あなたという聖女をこの国に戴けることを祈っている」
やはりあの時のように、陛下はわたしの手の甲に口づけた。
しかし、以前とは違って続きがあった。
陛下はわたしの二の腕を軽くつかみ、耳もとに唇を寄せ、甘い蜜を滴らせるような低い声でささやく。
「我が未来の妻、聖女マリアーナ……、早くあなたを抱きたい」
背筋にゾクッと痺れが走った。
一瞬不快に感じたが、そのおしりがむずむずする気持ち悪さはヴォルフに教えられた快感にも似ていて、戸惑いが胸を占めた。
* * * * *
わたしは神殿長とともに、数か月前には何度も通った通路を聖女の住まいである聖宮へと向かった。
聖女継承の儀の準備が整うまで、しきたりどおり聖宮で待つことになっている。