【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 モーリーンが国王陛下に下された処分は――いや、罰ではないから命令と言うべきなのかもしれない。
 けれど、国王陛下直々の辞令に逆らったら、この国では生きていけない。だから結局、処分と一緒なのだけれど。

「それで、北方神殿ですか……」

 モーリーンは女性神官として、北方神殿で生涯にわたって奉仕活動を行うことになった。

 北方神殿のある王国北部は女神の加護の少ない極寒の地だ。
 しかし、埋蔵量の豊富な銅の鉱山があるため、周囲を山に囲まれ孤立した場所に鉱山街がある。
 人々の暮らす土地には神殿が必要なのだ。

「はい。北方神殿は神官の数も少なく、私もなんとかしなければと思っておりました」

 正式な神官として任官するのだからもちろん処罰とは言えないが、厳しい生活が待っているだろう。

 もし……わたしが身代わり聖女になることを、きちんと断れていたら?
 モーリーンは北方に行かずにすんでいただろうか。
 仕立て屋の跡取り娘として、ささやかな幸福を手に入れていたのだろうか。

「聖女様の双子の妹であられるモーリーン様が赴任されれば、たいそう喜ばれることでしょう」
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