【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
3.女神は少女達を翻弄する
あくる日の午後、モーリーンが帰宅した。
花のような明るい笑顔で帰ってくるかと思いきや、様子がおかしい。
モーリーンは人目を忍ぶように裏口に馬車をつけ、姉妹で使っている二階の部屋に戻ると閉じこもってしまった。
「モーリーン……、どうしたの? 何かあったの?」
母さんが扉の前でおろおろしている。
わたしは何かありそうな予感がして、いつ用事を言いつけられてもいいように階段の下で待機していた。
しばらくすると、モーリーンが顔を出し、母さんを部屋に招き入れた。
それからまた少し時間が経ち、今度は母さんが出てきて、わたしに言った。
「マリアーナ、父さんを呼んできてちょうだい」
「……はい」
店にいた父さんを呼び、父さんが娘の部屋に入っていくと、ふたたび階段で様子をうかがう。
一体どうしたのだろう……。
得体の知れない不安がこみあげて、前掛けの布地をぎゅっと握りしめる。
何が起こったのか。家族は何を話しているのか。
わたしはそれを教えてもらえるのだろうか。
時間の過ぎるのが酷く遅く感じて、いつの間にか前掛けは皺だらけになってしまっていた。
* * * * *