【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 王妃様は無表情にわたしを見ると、優雅に唇の端を上げ軽く頭を下げた。
 王太子様はにっこり笑って陛下からわたしの手を受け取り、手の甲に唇をあてる。

「聖女殿、お目にかかれて光栄です。あまりの清らかな美しさに、あなたが私の聖女であればよいのにと思ってしまいました。お許しください」
「エウスタシオ、控えよ」
「はい、父上」

 陛下が王太子様を鋭い目で睨みつける。王太子様は父王の言葉をどこ吹く風と聞き流し、にこにこしている。
 何か変な雰囲気だ。二人の間にはわだかまりでもあるのだろうか……。

 陛下はさらに後ろにいた、若い二人の女性を呼んだ。二人とも二十代半ばくらいで、とても綺麗だ。

「妾妃のトリエスタ、そして、クロティルダだ」

 妾妃……。
 つまり第二、第三のお妃様。

 陛下は面白そうにわたしを見ると、わたしの耳もとに低い美声でささやいた。

「国で最も尊ばれるのは、もちろん聖女だ。私に女神の加護を与えてくれたら、あなたをここにいる誰よりも大切にすると誓おう」
「陛下、わたしは……」
「今宵、楽しみにしている」
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