【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「え? わたしが、聖女に……?」

 わたしが部屋に呼ばれたのは、夕方近くなってから。
 しかも、なぜかモーリーンの代わりに、わたしが聖女になるという話になっている……。

 どういうことなの?
 何がなんだか、わからない。

 モーリーンは自分の寝台に座って、扉の前に呆然と立つわたしを、うるうると涙ぐんだ瞳で見上げた。

「別に、マリアーナに女神の加護があるというわけじゃないのよ。それはわかってね? 自分の力だと誤解しちゃうと、あとでマリアーナがつらい思いをするから」

 わたしとモーリーン、二人で使っている部屋は狭く、寝台が二つ並ぶと椅子を置く場所もない。
 わたしの寝台には父さんと母さんが並んで腰かけていて、わたしの座る場所はなかった。

「でも、あたしにはあんなこと、とても無理。聖女のお役目なんて、きっと耐えられないわ」

 モーリーンがはらりと透明な涙をこぼす。
 母さんが慌てて立ちあがり、両手で顔を覆うモーリーンを強く抱きしめた。

「そうよね、モーリーンは繊細だから……。そんなことができるわけがないわね」
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