【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
2.初夜の儀
浴室の付いた豪華な部屋だった。
「こちらが初夜の儀を行う『双月の間』でございます」
案内してくれた王宮の侍女が厳かな口調で言う。
机や椅子、こまごまとした装飾品もあるけれど、ひときわ大きな存在感を放っているのは部屋の中央にある寝台だった。白い天蓋に囲まれた巨大な寝台は、大人が三、四人寝てもまだ余裕がありそうだ。
そして、
「扉が三つ……?」
一つはわたしが入ってきた扉、二つ目は浴室の扉。
もう一つはなんだろう。
衣装部屋とかかしら。
「こちらの扉は陛下が休憩されるお部屋へと続いております」
「陛下はこちらにお住まいなのですか?」
「いえ……、双月の間を含め、この館全体が初夜の儀のための特別な建物でございます。普段は使われておりません」
「凄い、ですね……」
田舎者丸出しなわたしの言葉には慎み深く何も答えず、侍女はわたしを椅子に座らせ、他の侍女達と一緒に複雑に結った髪をほどきはじめた。
「聖女様にはまず禊をしていただきます。その後、陛下がいらっしゃいますので、『孤月の誓い』を立てていただき、初夜の儀となります」