【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
この部屋にはわたし達以外の人はいない。
でも、王太子様は一歩わたしに近づき、声をひそめてささやいた。
「父上――国王陛下への求心力が落ちている」
「それは……聖女継承の儀の失敗で?」
片方の眉を上げて、わたしを凝視する。
「気づいていたのか。聖女継承の儀を二度失敗したことは確かに痛手だ。だが、それだけではない」
「…………」
「明らかにここ数年で国力が低下している。作物の不作が続いていることを知っているか?」
「はい。わたしは仕立て屋の娘ですが……、農村での不作の噂は聞いています」
「やはり民は不安に思っているのだな。問題は、それが回復する兆しがないということだ。悪天候が頻発し、続く災害に悩まされている地域も多い。国民だけではなく、貴族達も国内が不穏な状態になるのではないかと恐れている」
そういえば東方神殿に聖女選定の儀を受けに行った時、集まった女性達が話していた。天候が不順で作物の出来が悪い、なかなか子宝に恵まれなくなった、というようなことを。
そして、それは愛と豊穣の女神レクトマリアの力が薄れているからではないかと噂されていたのだ。
でも、王太子様は一歩わたしに近づき、声をひそめてささやいた。
「父上――国王陛下への求心力が落ちている」
「それは……聖女継承の儀の失敗で?」
片方の眉を上げて、わたしを凝視する。
「気づいていたのか。聖女継承の儀を二度失敗したことは確かに痛手だ。だが、それだけではない」
「…………」
「明らかにここ数年で国力が低下している。作物の不作が続いていることを知っているか?」
「はい。わたしは仕立て屋の娘ですが……、農村での不作の噂は聞いています」
「やはり民は不安に思っているのだな。問題は、それが回復する兆しがないということだ。悪天候が頻発し、続く災害に悩まされている地域も多い。国民だけではなく、貴族達も国内が不穏な状態になるのではないかと恐れている」
そういえば東方神殿に聖女選定の儀を受けに行った時、集まった女性達が話していた。天候が不順で作物の出来が悪い、なかなか子宝に恵まれなくなった、というようなことを。
そして、それは愛と豊穣の女神レクトマリアの力が薄れているからではないかと噂されていたのだ。