【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
3.女神の加護は渡さない
「聖女殿の説得には時間が足りなかったようだな。それとも、聖女殿の気持ちは若い男に傾いたのか?」
国王陛下は中途半端に伸びた王太子様の手を払いのけ、わたしの腕を強くつかんだ。
「痛……っ!」
「どうなのだ、聖女マリアーナ」
「そういうわけではありません、けれど」
「なら、よい。エウスタシオ、出ていけ。近衛騎士を呼ぶぞ」
王太子様は陛下とそっくりな皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「どうぞ。呼びたければ呼ぶといい。騒ぎになることは、父上にとっても望ましくないのでは? 王太子が国王の譲位を求め、聖女に加護を賜るように直訴したなど……、格好の醜聞だ」
「エウスタシオ」
「また父上への不信感が高まるのではないでしょうか。それをわかっているからこそ、あなたは大声で騒ぐことができない」
ふたりはしばし睨みあっていたが、陛下が余裕のある表情で断言する。
「聖女殿の気持ちが決まっているのだから、何を言っても無駄だな。女神の加護は私のものだ」
王太子様がくっと悔しそうに唇をかむ。
「あの……お待ちください」