【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
4.強引な腕にとらわれて
陛下の厚みのある体がのしかかってきて、わたしを押さえこむ。
「……いやっ!」
「往生際が悪いぞ?」
「ちゃんと……話しあいたんです、陛下……」
涙がこぼれた。
こんな時に泣くなんて、と思うものの理性では止められない。
「この期に及んで話しあいとはな。聖女殿は男というものを知らなさすぎる」
「お願い……」
陛下の指がわたしの頬を撫で、顎を持ちあげた。唇が迫ってくる。
「……やめて」
とっさに顔を背けようとしたが、ほとんど首が動かない。けれど、かろうじて唇は避けられたようで、頬にほのあたたかい感触があたった。
「……っ」
「なかなかしぶといな」
陛下がおもしろそうに言った。
次の瞬間、上半身がすっと涼しくなった。
何があったのか、わからない。気が付いたら、わたしの寝衣の前がほとんど開いている。
「この飾り紐を引くと、一気に寝衣を剥ぎ取ることができるのだ。侍女から説明はなかったか?」
胸もとに飾られていたリボン。
ほどかれて一本の紐になってしまったそれをヒラヒラとひらめかすと、陛下は軽く腕を振って床に投げ捨てた。