【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 そうなったら、ヴォルフとは永遠に結ばれない。

『……絶対に離さない。人間でも、神々でも、俺からおまえを奪うものは許さない』

 ヴォルフとは、二度と逢えない……。

『自分の人生は自分で決める、強くなりたいと言ったマリアーナは、今までで一番輝いていた』

 ヴォルフと一緒に生きていくというわたしの人生の選択は、跡形もなくなかったことになってしまう。

 強くて凛々しい、女神様の眷属神……。
 優しくて頼りがいのあるヴォルフ。
 大きな体をしているのに、とても甘えん坊なわたしの聖獣。

 髪を優しく撫でる指先を思い出す。
 首筋をくんくんと嗅ぐ吐息のぬくもりを、わたしをすべてつつみこんでくれる美しい白銀の毛並みを思い出す。

「いや……」

 わたしがともに生きていきたいのは……。
 わたしの処女を捧げたいのは。
 女神の加護を譲って幸せになってほしいのは。

 思考を溶かしていく胎内の熱と、湧き出す快感で朧げになっていく意識の中で。
 ただ一つ、はっきりと残っているもの。

 大切な……大切なひとの名を呼ぶ。

「ヴォルフ……」

 あなたを愛してる。

「ヴォルフ……助けて」


< 167 / 294 >

この作品をシェア

pagetop