【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「わあ……」

 玄関の前には広めのテラスが付いていた。ここに小机と椅子を出してお茶を飲むのも楽しそう。
 明るい色の板戸を押して家に入る。

「まだ工事中?」
「うん」

 家の中には仕切りがなくて、全部が見渡せた。ふたりで暮らすにはちょうどいい広さかも。
 木の板や工具があちこちに置いてある。
 部屋の片隅には寝台があった。柔らかそうな布団に新しいシーツが敷かれている。
 ヴォルフはそのシーツの上にわたしをそうっと下ろした。

「こっち、見てみろ」

 寝台の横には大きめの窓があった。
 その窓から見えたのは……、

「湖!?」

 森の木々の向こう、月の光がキラキラと反射しているのは、見覚えのある湖だった。あちこちに小さな島が浮いている。
 ヴォルフが小川の浅瀬に温泉を掘ってくれた、あの美しい湖だ。

「気に入ったか?」
「ええ……ええ! 凄く素敵」
「温泉、気に入ってたから。ここは湖の中で一番大きな島なんだ。調べたら、この島にも温泉が湧いてた。明日入りに行こう」
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