【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 わたしの首筋に顔をうずめたヴォルフがくんくんと匂いを嗅ぎ、襟足を舐める。

「あ……わたし、臭わない?」
「いい匂いがする」
「そうじゃなくて! あの……いろいろあって……そのあと湯浴みしてないし……」

 体の汚れは夜の間にヴォルフが綺麗にしてくれていたみたい。
 でも、この島にも温泉があるって言ってたし、できれば湯浴みしたいなあ。

 するとヴォルフが眉をしかめて、もの凄く怖い顔をした。狼の姿だったら唸り声を上げていそうだ。

「あいつの……国王の匂いは全部上書きした。俺のマリアーナに……許せない」
「待って! 大丈夫だから。もう覚えてない。わたしにはヴォルフだけよ」

 今にも飛び出していきそうな雰囲気に慌てて止めると、ヴォルフはまたすがりつくようにわたしを抱きしめた。
 その背中を子供をあやすようにポンポンと叩く。

「ねぇ、ヴォルフ、温泉があるのよね? わたし温泉に入りたいな」

 ヴォルフの狼の耳がピンと立った……気がした。

「温泉、あるぞ。マリアーナが好きだと思ったから探したんだ。食器を片づけたら行こうか」
「うれしい!」
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