【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「貴重な幸運の加護だ。愛ではなく、欲のために利用されるようになってもおかしくはない」

 空中で止まっていた白い玉がふらふらと果物のお皿に落ちる。赤い実の果汁が白い玉の表面に付いた。

「あ、女神様、汚れてしまいます!」
「マリアーナ、大丈夫だ。女神がそんな気分になっているだけで、実際は汚れていない。実体ではないからな」
『ヴォルフ、酷い。マリアーナちゃんが優しくしてくれたのに』
「優しくされる価値があるのか?」

 皮肉っぽく眉をつりあげるヴォルフ。
 白い玉は心なしかシワシワとしぼんでしまったようだ。

『マリアーナちゃん』
「は、はいっ」
『ごめんなさいね。つらい想いをさせてしまったのね』
「はい……いえ、でも、おかげでヴォルフと出逢えましたから」

 ヴォルフににこりと微笑みかける。
 確かにつらいこともたくさんあったけれど、今はヴォルフがいる。すべてはヴォルフを愛する勇気を持つための、そしてヴォルフに愛してもらうための試練だったと思える。

 ヴォルフが大好き。
 ずっと、ずっと一緒にいたい。
 みんなが愛する人と出逢えたら……、こんな幸せを知れたらいいな……。
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