【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「マリアーナもひとりで背負う必要はない。みんなってのがどいつのことかわからないが、そいつらの人生はそいつら自身が背負うものだろ」

 そうだった……。
 わたしは何度も考えたはずじゃない。

 ――聖女の初夜権。

 それは、奪われた自由の象徴。
 見知らぬ誰かを背負おうとするのは、その人の決定権を奪っているということだ。聖女の初夜権が国王陛下に所有されているのと同じ。
 聖女もまた誰かの人生をその人の意志と関係なく決めてしまっている。

「……そうね。ありがとう、ヴォルフ」
「よし、寝台に運ぶぞ。つかまって」

 わたしを抱えたままヴォルフが立ちあがる。危なげない足取りで室内に入り、静かに寝台へと下ろされた。

「少し寝ろ。目を閉じてるだけでもいいから」
「うん、ありがとう……。ちょっと眠くなってきたかも……」

 本当にありがとう、ヴォルフ……。

 横になって目を閉じてから、ふと気が付いた。
 あれ、わたし今日、起きてから一歩も自分で歩いていない……?





 * * * * *





 寝台でうつらうつらしながら、女神様に言われたことを思い出していた。
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