【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
4.王家の馬車が迎えに来ました
七日後の早朝、迎えの馬車がやってきた。
平凡な構えの仕立て屋の前に停まったのは、王家の紋章が描かれた豪華な馬車だ。
馬車の周囲を黒い制服の近衛騎士団が囲み、そのさらに外側を白いローブの神殿騎士団が護衛している。
この大きな街でも、こんなに厳重な警備は見たことがない。
そして、その馬車から降りてきたのは、なんと、国王陛下その人だった……。
「渋くて素敵……」
「陛下、凄くかっこよくない?」
「……愛妾になりたいかも……」
モーリーンを見送りに来た若い娘達や、近所の奥様達が、遠巻きにして国王陛下を見つめている。
ひそめたささやき声は、意外とこちらまで聞こえてきて、護衛騎士かお付きの人にとがめられるのではないかと、はらはらした。
レクトマリア神聖王国、国王オルヘイム二世。
我が国の国王陛下は、五十歳を過ぎているとは思えないほど若々しかった。
現役の騎士にも劣らない鍛えた体に、鋭い目つき。黒褐色の短髪にはわずかに白いものが見える。