【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「一応、脱衣場だ」

 丸太小屋の向こうには、砂浜を掘り下げた広めの湯船があった。目の前に青く光る湖が広がっている。

「わあ! いい景色。湖を眺めながら、お湯に入れるのね」
「気に入った?」
「とっても! 早速入りましょ!」

 脱衣場に駆けこんで、急いで服を脱いだ。エプロン、上着、靴下、スカート、ペティコート、コルセットにシュミーズ……。空っぽの棚があったので、そこに簡単に畳んだ服を置く。
 ガタ、と音がして振り返ると、そこにはヴォルフがいた。

「ヴォル……フ?」

 入口の扉に寄りかかって腕を組み、こちらをじっと見ている。

「え? ……あ!」

 わたし、裸だわ!!

 こんなに素敵な場所で湯浴みできるのがうれしくて、ヴォルフがいるのをすっかり忘れていた。いや、覚えてはいたのだけれど、ヴォルフと一緒に湯船に入る意味を考えていなかった。

 明るい日差しの下で……すべてを見られてしまうんだわ。

 ヴォルフは何も言わず一歩も動かないまま、ただわたしを見つめている。
 ヴォルフの金色の瞳は強い熱を浮かべていた。ヴォルフの視線だけで、その場に焼きついてしまいそうだった。
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