【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
5.飢えた獣は少女を喰らう
部屋の中はまだ明るい。
木々の梢よりも高いところにある樹上の家には、遅い午後の日差しが降りそそいでいる。大きく取られた窓から差す光で濃い色の影ができていた。
「……んっ……」
その光と影の中で、わたしは飢えた獣に貪られていた。
覆いかぶさる体、拘束するように強く抱きしめる腕。部屋に入った途端に始まった激しい口づけに呼吸もままならない。
立ったまま服を脱がされ、一糸もまとわない姿でヴォルフの前にたたずむ。
「ヴォルフ……」
金色の瞳を光らせる獣。
わたしはうっとりと微笑んだ。
隠さずにわたしへの欲望を見せてくれるヴォルフが愛しくてたまらない。
「今日は声、出してね?」
「声?」
聖なる水晶の影から逃げていた時、滝の裏側の洞窟でヴォルフが言っていたことを思い出した。
「前に……わたしもヴォルフの気持ちいい声を聞きたいって言ったら、駄目だって。そんなことを言われたら我慢できなくなるって」