【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「ヴォルフを……全部、ちょうだい」
「ああ、全部やる。だから、おまえのすべてを俺にくれ」
「……はい」
急速に日が陰り、部屋の中は薄暗くなっていた。
青い世界に少しだけ欠けた明るい月の光が注ぎこまれる。
媚薬でぼんやりしていた昨夜の感覚とはまったく違う。
ヴォルフの熱さ。滴り落ちてくる汗。押し殺した低い声。
「大丈夫だ。マリアーナ、力を抜いて」
力を抜いて。ヴォルフを信じて。
顔を汗でびっしょりにして眉をしかめるヴォルフ。必死に衝動をこらえて、優しく笑うヴォルフ。
大好き……。
ヴォルフが目を閉じて体を震わせた。
……熱い。
吐息が熱い。
体が燃える。
あふれるような幸せを感じた。
心も体も、ヴォルフで満ちていく。
無意識に入っていた力が抜け、すべてをヴォルフに任せる。
もう、聖女はいない。
わたしは、聖女ではない。
わたしが処女を失っても、愛するひとに渡せる女神の加護はない。
けれど、わたしは祈った。
すべての幸運を、このひとに――。
* * * * *
「ああ、全部やる。だから、おまえのすべてを俺にくれ」
「……はい」
急速に日が陰り、部屋の中は薄暗くなっていた。
青い世界に少しだけ欠けた明るい月の光が注ぎこまれる。
媚薬でぼんやりしていた昨夜の感覚とはまったく違う。
ヴォルフの熱さ。滴り落ちてくる汗。押し殺した低い声。
「大丈夫だ。マリアーナ、力を抜いて」
力を抜いて。ヴォルフを信じて。
顔を汗でびっしょりにして眉をしかめるヴォルフ。必死に衝動をこらえて、優しく笑うヴォルフ。
大好き……。
ヴォルフが目を閉じて体を震わせた。
……熱い。
吐息が熱い。
体が燃える。
あふれるような幸せを感じた。
心も体も、ヴォルフで満ちていく。
無意識に入っていた力が抜け、すべてをヴォルフに任せる。
もう、聖女はいない。
わたしは、聖女ではない。
わたしが処女を失っても、愛するひとに渡せる女神の加護はない。
けれど、わたしは祈った。
すべての幸運を、このひとに――。
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