【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 上半身を起こした瞬間にずり落ちた毛布を、ヴォルフがぶつぶつ文句を言いながらふたたびわたしに巻きつけた。

「なんでこんな時に来るんだ。もう一回抱けたかもしれないのに」
「あらあら、絶倫ねぇ。さすがわたくしの眷属」
「……で? 今度はなんの用だ」

 女神様は、うふふと可愛らしく首を傾げると、内緒話をするように口もとに手をあててささやいた。

「どうしてわたくしがこの姿でここにいると思って? 水晶の幻影ではなく」
「…………」

 ヴォルフは不機嫌そうに黙りこみ、一言も発しない。さすがに女神様に失礼な気がして口を挟んでしまった。

「あの、どうしてですか?」
「ふふふふふ、マリアーナちゃん、今、わたくしから圧を感じる?」
「圧?」
「そう。息苦しいような、押し潰されるような圧迫感。以前滝の洞窟で会った時、苦しくなかった?」

 そういえば、滝の裏側にあった洞窟で最初に白い球体の姿の女神様を見た時、重いものに潰されそうな息苦しさがあった。

「でしょう? でも、今は感じない」
「確かに何も……」
「愛の力ね!」
「え……?」
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