【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「んー」っと舌を出したまま、ヴォルフを見上げた。顔を近づけるとヴォルフも舌を出してくれる。
 舌と舌をふれあわせるだけの口づけ。
 ぺろぺろと舐めあっていると、まるで動物になった気分だ。

 やがて焦れたようにヴォルフが抱きしめてきて、深い口づけをする。

「あぁ……ヴォルフ、好き」
「俺も愛してる」
「ごめんね。もう『待て』なんて言わないから……」

 大きな手のひらが、わたしの首をさすり肩を撫でる。

「いや、俺が悪かった。あいつらを牽制するつもりがつい夢中になった……」
「牽制なんてしなくても大丈夫なのに」
「マリアーナが可愛すぎるから心配なんだ」

 ヴォルフはわたしを過大評価してると思う。わたしを欲しがるひとなんて、そんなにいるはずがないのに。

「どうしたら不安じゃなくなるの? わたし、なんでもするわ」

 ヴォルフはしばらくじっと考えていた。

「わからない。これからも嫉妬してしまうと思う」
「……うん」
「だから、『待て』をしてもいい。俺がやりすぎたら止めてくれ」
「でも……」

 あんな落ちこんだヴォルフはもう見たくないな。
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