【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 わたしがためらっていると、ヴォルフは「じゃあ、交換条件だ」と笑った。

「交換条件?」
「ああ。たとえば……『待て』をした日は、犬になる」
「わん?」

 ぷはっとヴォルフが吹き出した。おかしかった?

「違うよ」

 ヴォルフの手のひらが背中をすうっと撫で、おしりをつかんだ。
 わたしの耳に唇を近づけてささやく。

「……ってこと」
「えっ!?」

 ヴォルフがぺろりと耳たぶを舐めた。

 頭がくらくらする。
 心がふわふわする。
 ヴォルフの力強さと熱情に酔ってしまったような気分……。

 空が白んでくるまで、わたしはヴォルフに貪られた。
 もう、『待て』は絶対にしないんだから!

 眠気と疲れで意識が飛びそうなのに眠れない。
 ヴォルフはさすがに眠くなったのか、わたしを後ろから抱きしめたままうとうとしている。

「マリアーナ……愛してる……」

 寝言、みたい。
 夢の中でも愛を語ってくれるひと。
 ……『待て』も、時々ならいいかな?


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