【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「おめでたね」
「……え?」
「妊娠しているわね。二、三頭かしら?」
「二、三……頭? 『頭』って……」
「ええ。狼ですからね。ふふふ」

 その場がしんと静まり返った。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 一拍おいて、ヴォルフが「うおぉおぉぉぉっ!」と吠え声を上げた。人の姿でいるのに、狼みたいに。

「ガオオォォォ!」
「グワァォォ!」
「クワァァァーン!」

 眷属神のみんなもそろって大きな声で吠えた。

「マリアーナ!!」

 わたしをギュッと抱きしめると、白い光をまき散らして変化し、巨大な狼の姿で走り出す。黒獅子と白虎と金狐もヴォルフを追って走りはじめた。

「ウオオオォォォォォン」

 遠くからヴォルフの声がする。
 喜んでくれているんだ。

「赤ちゃんが……」

 うれしさが徐々にこみあげてくる。
 わたしもできるなら遠吠えしたいくらいだった。
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