【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
5.白い月の輝く夜に
人々の期待。
陛下の愛の言葉。
聖女モーリーンに加護を授けた女神様……。
わたしは、偽物。
みんなをだまして、裏切っている。
街を出てから、眠れない夜が続いていた。
これまでに使ったことのないほど上等な柔らかい寝台に横たわっても、ちっとも眠くならない。
胸が潰れるように息苦しくて、二階にある寝室の窓を開け、庭を見下ろすために造られた広いテラスに出た。
夜空には月が煌々と輝き、静かにたたずむ木々の葉を青白く照らしている。
「……ヴォルフ……」
神々しい白い光を見て、神殿の森の白狼を思い出した。
つらい時、あのもふもふを想うと、少し気持ちが落ち着く気がする。
「今、どこにいるのかな……」
林の手前に花園があり、庭のあちこちに篝火が焚かれている。目をこらすと、何人もの騎士が警護に立っているのが見えた。
「え……なに?」
その時、ふわっと月の光が強くなった。
視界が真っ白に染まる。
まるで、聖女選定の儀でモーリーンが聖女に選ばれた時のようだ。いや、あの時よりも強い輝き。
まぶしくて両手で顔を覆う。