【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 ヴォルフだけなら走れば速いのだけれど、子供もいるので、わたし達はのんびりとヴォルフの借りた馬車に乗ってきた。馬車は街の入り口の馬宿に預けてある。

 子供達は今、ヴォルフの腕の中で興味深そうにあちこちを見まわしている。たぶん人間には好奇心旺盛な仔犬のように見えるだろう。

「グラウとナハトも一緒に入れるわよね?」
「当たり前だろう。こいつらを泊まらせない宿など、こっちからお断りだ」

 ヴォルフが二人を軽々と持ちあげると、急に目線の高くなった子供達はキャンキャンと喜びの声を上げる。男の子だからか、少し乱暴に扱われるのがうれしいみたい。
 静かな森の中とは違うにぎやかな街の風景を楽しみながら、わたし達は今夜の宿に到着した。





 日が暮れはじめると、宿の半地下にある食堂兼酒場は活気づく。
 ここはそれなりに景気のいい商人が泊まるような宿で、下町の酒場みたいに荒くれ者がくだを巻いたりすることはない。けれど、祭りを控えた街には浮かれた雰囲気が漂っていて、この食堂も例外ではなかった。
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