【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「俺はマリアーナ以外見ないぞ」
「そりゃ、そうだ。俺だって自分の嫁がこんな美女なら、ほかの女なんか目に入らないさ」
「あはは、違いない!」
「グルルルル……」

 ヴォルフ、狼みたいなうなり声が出てるわよ。
 袖を引いて小さく注意を促すと、ふてくされた様子で腰かける。

「まあまあ、兄さん、悪かったよ。今日はおごってやるから、この街の名物を食べて行きな。女将さん、麦酒も追加で頼むよ」
「はいよ!」

 奥に引っこんだ女将さんが麦酒の大杯をどんどんと運んできて、みんなの前に置いた。
 そのうちの一つを商人がヴォルフに勧め、無理やり乾杯する。おじさんはわたしには果実水をご馳走してくれた。

「いや、今夜はいい夜だ。明日の聖女降誕祭が楽しみでしょうがない。そういえば、あんたの奥さんは聖女様と同じ名前なんだな?」
「…………」
「マリアーナさんか。まあそれほど珍しい名前じゃないしな。でも、縁起はよさそうだ!」

 大忙しの女将さんが食事ののった大皿をわたし達に差し出した。

「このあたりの名物だよ。おごりだっていうから、たくさん食べておくれ」

 片目をつぶってニヤリと笑う女将さん。
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