【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 おじさんはわたしを見て深くため息を吐いた。

「マリアーナはつらい目にあわせちまった」
「え? ……そうなんですか?」
「あの子は引っ込み思案だったけど、優しい子だった。うちの息子が外で怪我をした時によく薬を塗ってくれたんだ。今考えれば、街のやんちゃ坊主達はさんざん世話になっていた。聖女にふさわしい心根のいい子だったのに、それなのに俺は……俺達はマリアーナを愚図でのろまな厄介者として酷い扱いをしていた」
「…………」
「それが、国を救うために女神様の身許に行ってしまうなんて……」

 にぎやかに麦酒を飲んでいた面々が一気にしんみりと黙りこくる。
 そういえば、国の人々は聖女が女神の御使いに連れられていった、つまり死んだと思っているのだった。
 それは間違いなんだけど訂正するわけにも行かず、わたしは聞いているしかなかった。

「みんな、後悔してるよ。最初はマリアーナの双子の妹のモーリーンが聖女に選ばれたって信じこんで……、マリアーナを貶めるようなことを言ってしまった。マリアーナは命を賭けて我々を守ってくれたのに、もう謝ることもできないんだ」
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