【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 お茶をひと口飲んだ父さんが独り言のようにつぶやく。

「考えてみれば、マリアーナが実際に悪さをしているところを見たことはなかったな……」
「そうだねえ、いつもモーリーンから話を聞くだけだった」
「女神様に選ばれるくらいだ。あれは昔から変わらず優しい子だったんだな」
「あの子に……、マリアーナに」

 突然、母さんが言葉に詰まった。小じわの刻まれた目もとから涙がこぼれる。

「もう一度だけでいいから会いたい。会って……謝りたい。あんたは立派な娘だと、わたし達の誇りだと、マリアーナに伝えたかった」
「それは俺も同じだ」
「わたし達は取り返しのつかないことをあの子にしてしまった……」

 嗚咽しうなだれる母さんの肩を父さんが支える。
 わたしももらい泣きしそうになったけれど、ヴォルフの腕の中から不思議そうにこちらを見る二頭の仔狼の視線に、涙をこらえて微笑んで見せた。

「お祭りに戻りましょうか」
「もういいのか?」
「ええ、顔が見られてよかったわ」
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