【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 その時、ヴォルフがわずかに顔を上げて空を見た。

「ヴォルフ?」

 まぶしい……!
 まばたきするくらいの短い時間だったけれど、ヴォルフが白く光る。狼の姿に変化する時みたい。
 でも、光が収まってもヴォルフは人型のままだった。

「何があったの?」
「俺からの祝いだ」
「はい?」
「空を見て」

 空――。

「……あ!」

 よく晴れた空には薄い雲が漂っている。
 太陽の光を受けて、その雲が七色に輝いていた。
 虹のような輝きは揺らぎながら白い雲を縁取り、次から次へと色を変える。
 グラウとナハトも何か感じたのか、一心不乱に空を見上げていた。

「綺麗……」
「美しいだろう?」

 ヴォルフが神力を使ってくれたのだろうか。
 普段姿を変える時以外に、ヴォルフがわたしの前で神力をふるうことはほとんどなかった。眷属神の決まりごとがあるのかと思っていたのだけれど。

「こんな凄いことをしてもらってよかったの?」
「ああ。女神に話は通してある」
「そう……、ヴォルフ、ありがとう」
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