【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 ヴォルフは子供達を抱えたまま、わたしの額に軽く口づけた。

「マリアーナ、誕生日おめでとう。おまえがこの世に生まれてきてくれてよかった」
「……ヴォルフ」
「いろいろと腹立たしいことはあるが、その点だけはおまえの両親に感謝しないとな」

 街のほうからもかすかなどよめきが聞こえてくる。みんな彩雲に気づいたのだろう。
 ふと見ると、父さんと母さんも虹色の雲を見つめていた。母さんだけではなく、父さんも泣いている。

「女神レクトマリアの祝福のようだな」
「ええ……、マリアーナがこちらを見ているみたい」

 父さん……母さん……。
 意識せずこぼれてしまった涙をヴォルフがぬぐってくれる。

 父さん、母さん。
 あなた達の娘の居場所はもうここではないけれど、わたしははるか遠くの空の下で幸せになるから。
 どうか父さんと母さんの心にも平穏が訪れますように。

 空は青く澄んで高く、白い雲が浮かんでは流れて消えていく。
 この世のものとは思えない不思議な色彩の雲も、やがてかすんで光の中にとけていった。


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