【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
4.幸せがあふれて止まらない
「ヴォルフが湖の家でお祭りに行こうって言ったのは、お祝いの雲を見せてくれるためだったの?」
街の広場で大道芸を見ながら、ヴォルフに聞いてみた。
ヴォルフに抱えられた子供達は、奇妙な格好をして飛んだり跳ねたりしている軽業師に夢中で、目がくぎづけになっている。
「いや、それはあとから考えた」
「じゃあ、なんで?」
「単に自慢したかったからだ!」
「……自慢?」
ヴォルフは背筋をピンと伸ばして胸を張った。もともと背が高いのに、わたしよりも頭一つ分以上大きくなる。
「俺のマリアーナはこんなに幸せになったんだって、街のやつらに見せつけたかったんだ」
「はい?」
「ちょっとした意趣返しさ」
にやりと笑うヴォルフはかっこいいけれど……、ちょっと子供っぽくない? でも、そんな意外性も可愛くて好きだから、まあいいかな?
「キャン!」
「キャン!」
その時、仔狼達が興奮したように吠えだした。
「グラウ、ナハト、どうしたの?」
「あ、あいつら~!」
身軽に宙返りしながら舞台の端から端へと移動する、何人かの軽業師。