【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「グラウ、ナハト、お帰りなさい。大丈夫だった?」
「うん!」
「でっかい豚がいたんだ。おいしそうだった!」

 グラウとナハトはあいさつ代わりにわたしの腰にしがみつくと、パッと離れて、ヴォルフの肩越しに絵をのぞき込んだ。
 好奇心満々な瞳は、すぐにおもしろそうなものを探し出す。

「これ、絵だよね? おじさんが描いたの?」
「母さんみたい!」
「……グラウ!」

 わたしは慌ててグラウの口を押さえた。

「失礼よ。これは聖女様の肖像画なのよ」

 画家のおじさんは、目の前にいるのが当のマリアーナだなんて疑いもせずに、ほがらかに笑った。

「そういえば、奥さん、聖女様に似ているね。これは旦那さんがベタ惚れになるわけだ」
「だろう? 名前も聖女マリアーナと同じなんだ」
「へえぇ、そうなんだな」

 ヴォルフはうなずいて立ち上がった。
 わたしへの視線は穏やかだけれど、大きな両の手のひらは子供たちの頭をぎゅっと押さえている。余計なことをしゃべらないようにと、無言で叱っているのだ。

「父さん、離してよ」
「もう母さんのことは言わないから。ごめんって」

 じたばたともがく子供たち。
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