【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 もちろん、ヴォルフも本気の力で押さえつけているわけではない。三頭の狼が遊びでじゃれているようなものだ。

(あ、いいことを思いついたわ)

 そんな三人の姿を見ていて、わたしはひらめいた。

「ねえ、せっかくなら、みんなで描いてもらわない?」
「みんなって、俺たちもマリアーナと一緒に?」
「そう、ヴォルフも、グラウとナハトも。家族そろっての『記念』にしましょう」

 わたしひとりの絵なんて照れくさいけど、みんな一緒なら素敵な思い出になりそうだ。
 画家のおじさんも乗り気な様子で身を乗り出した。

「家族の肖像か。お貴族様みたいだが、おもしろそうだな。大丈夫かい? 代金もそれなりにもらうことになるよ」
「ああ、金は先払いするから、ちゃんとした絵が欲しい」

 ヴォルフが財布を取り出して、おじさんが告げた代金に色をつけた謝礼を払った。
 彼は女神の眷属神なのに、森で狩った珍しい動物の皮や肉を売ったりして、人間の世界でも稼いでいるらしい。
 初めてそれを聞いた時には、感心するのと同時に、思わず笑ってしまった。わたしの夫は、意外と堅実だったみたいだ。
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