【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 ヴォルフは熱い息を吹きかけながら、わたしを執拗に舐めている。

「いやぁん……あん!」

 わたしが胸を懸命に隠そうとすると、長い鼻先を使ってころりとひっくり返される。

「キューン」

 背中からおしりにかけても、すみずみまで舐められた。
 全身、ヴォルフの唾液まみれだ。

「……はぁ、はぁ、ヴォルフ……。いくら狼でも、こんなの変よ?」
「クン?」
「なんだか……おかしな気分になってきちゃうから、もうやめて?」
「…………」
「ね?」
「キュ――――ン!」

 必死にお願いしているのに、ヴォルフはさらに興奮したように息を荒らげて、またわたしを舐めはじめた。

 ああ、もう、狼のしつけってどうしたらいいの!?





「わたしね、妹の代わりに聖女になったの。ううん、違う。聖女のふりをしているの……」
「クゥン」

 ヴォルフが、やっと、ようやく、なんとか落ち着いたので、わたし達はテラスの端にある階段に腰かけて、庭園を眺めていた。
 相変わらず無音で、何一つ動かない、不思議な夜の世界……。

 もしかしたら。
 これは、ヴォルフの力なのかしら。

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