【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「わたくし達神官が聖女様のご不自由がないようにすべて整えさせていただきますので、お心のままにお選びくださいませ」
「ありがとうございます……」

 大神殿に到着してから、数日が経った。
 初めは女性神官達が着替えや沐浴まで手伝おうとするのに驚いて、慌てて断ったりもした。
 でも、神官達の困った顔を見てあきらめた。子供のように世話を焼かれるのもまた、聖女の仕事なのだと思うしかない。

 ……『聖女モーリーン』が、わたしの仕事。わたしの役割。

 相変わらず胸の内には罪悪感と不安がわだかまっているけれど、ここの生活には少しずつ慣れてきた。

「あの……先代の聖女様は、どちらで暮らしていらっしゃったのですか?」

 わたしが聞くと、女性神官は再び穏やかに微笑んだ。

「お若いころは、王宮の近くにある小離宮でお過ごしでした。国王陛下がお渡りを控えるようになると、先代様はこの聖宮に移られ、そのままこちらで女神様のみもとにお帰りになりました」
「……そうですか」

 つまり、若い頃は国王陛下の愛人として離宮に住んでいて、年を取ったら妾のお役を解かれ、大神殿に戻って亡くなった、ということか……。

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