【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
7.かりそめの花嫁になる日
大神殿を出て、王宮へ行く日が来た。
わたしが、『聖女』になる日。
国王陛下の秘められた花嫁になる、運命の日……。
聖女の衣装だという真っ白なドレスに身をつつみ、丁寧に手入れをされて艶を増した黒髪を繊細な宝石で飾られたわたしは、見かけだけはまるで本物の聖女のようだった。
「本当にお美しいです、聖女様」
「……綺麗にしていただいて、ありがとうございました」
このひと月で教わった通りに、優雅な礼をしてみせる。
こんな華やかに装って、たくさんの神官に見送られ、豪華な馬車に載る自分をまるで他人事のように感じた。
王宮は、大神殿よりもさらに壮麗だった。
聖なる水晶をその手に掲げた白髪の神殿長のあとに付いて、長い廊下を歩いていく。その先にあるものを想像すると、大神殿を初めて見た時のように周囲を見回す気にはなれなかった。
この廊下の先にある大広間に、国王陛下や貴族達が集まっているはずなのだ。
「……っ」
急に現実が迫ってくる。
胸が苦しくなって、思わずしゃがみこみそうになった。