【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
8.当たりくじ、ハズレくじ - side モーリーン -
あたし、聖女様なんだって!
ひと月ほど前に、東方神殿で行われた聖女選定の儀。
あたしはそこで、聖女として選ばれた。
まあ、当然と言えば当然かも?
あたしは『花のモーリーン』。
街で一番の器量良しだし人気もある。マリアーナがいなければ、ね。
あ、お客様だ。
「いらっしゃいませ!」
両親の経営する仕立て屋の店先で日向ぼっこをしていたあたしは、明るく挨拶をしてから、はっと気づいて口を押さえた。
いけない!
今はあたし、『蕾のマリアーナ』なんだった。
まだしばらくは地味に暮らさなければならない。面倒だなあ。
マリアーナはあたしの双子の姉。
小さい頃から大人しくて聞きわけがよくて、人に好かれていたマリアーナ。あたしと同じ顔をしているのに、あたしよりも可愛がられるマリアーナが大嫌いだった。
双子なのに、まるで年上のような態度を取るのも腹が立つ。
だから、少しずつ悪い噂を広めて、マリアーナの評判を落としてやった。
「何かご入用ですか?」
店に入ってきた客に、ちょっと陰気なかんじを作って声をかける。