【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 あたしをジロジロと見ながら、ぶっきらぼうにつぶやく。
 美形は声までいいのかしらね。小さくてもよく響く声は、なめらかで甘く感じる。

「どのようなものをお探しでしょう?」
「あんたが着ているようなものを」
「若い女性用の普段着かしら」
「あと、外套とか外出着とか……下着もいる」
「一式ね。寸法は?」

 あたしの体を上から下まで眺める。

「……あんたと同じ」

 あらあら、この人、あたしに気があるのかしら。もしかして、あたしへの贈り物にしようとしてる?
 このドレスを君に……なーんて。
 どこかで見初められたのかな。無愛想なのも照れているから?

「うふふ、あたし、あなたの恋人に似てるの?」
「恋人じゃない」
「まあ、恋人じゃなければ、妹さん?」

 ちょっと怒ったように、眉をしかめる。
 これはますます脈ありかも。

「その一式を何組か。できるだけ早めに欲しい。古着でもいい」

 なんだ、古着か。
 贈り物じゃないのね。

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