【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「しかし、マリアーナ、なぜこのようなことをした。聖女の名誉に目がくらんだか、それとも私の寵愛が欲しかったのか」
「ち、違います。わたしは……」

 わたしが思わず言葉に詰まると、それを助けるようにモーリーンが再び陛下に頭を下げた。

「陛下、どうぞ姉には寛大なご処分をお願いします。……ずるくて意地悪なところもあるけれど、マリアーナはたった一人の姉なんです……」
「聖女殿は慈悲深いのだな」
「いいえ、そんな……」

 陛下はこめかみを押さえながら、集まった人々を見回した。圧迫感を覚えるほど強い視線が、ひとりひとりを確認していく。
 部屋の中の空気がピンと張り詰めた。
 ついに裁定が下されるのだ。

「聖女の名をかたり、聖なる水晶を損なった罪は重い。だが、これを公にしても、民心を騒がせるばかりで何も益はない。せめてもの救いは、聖女殿とマリアーナは見分けがつかないほどよく似ていることだ」

 わたしとモーリーンを見比べ、厳しい口調で全員に命じた。

「この件はこの場だけの話とし、箝口令を敷く」
「陛下……!」

 神殿長と貴族達が息を呑んだ。

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