【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 ――あの夜。
 白い月の光の中で、すべてのものの時が止まっていた。
 夜は、女神レクトマリアの力が最も高まる時間。
 そして、闇に輝く月もまた女神の象徴。

 そして、今。
 魔獣が棲むという深淵の森ですら、ヴォルフの気配に畏怖している……。

「そうか……、わかったわ」
「キュン?」
「あなたは女神様の御使い。聖なる獣なのね……?」

 女神レクトマリアに狼の御使いがいるという伝承は聞いたことがないけれど、御使いはさまざまな形を取るという。
 きっとそうだ。

「キュ、キューン?」

 なんと答えたらいいのか、迷うヴォルフ。

「聖なる獣……、聖獣さんね?」
「……クゥン」

 うーん、まぁいいか、という風情だ。

「でも……、女神様はきっとわたしのこと、怒っているわよね。御使いを遣わしてくれるなんてありえない……」

 そうだ、わたしは聖女の名を汚してしまったのだった。
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