【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
3.聖獣さんとわたし
ヴォルフとの旅は驚くほど快適だった。
何よりも気持ちが楽で、いつも笑顔でいられる。
もちろん不便なことはたくさんある。
毎日移動だし、夜は野宿だし……。
あれ、うーん?
改めて考えてみたら、移動も野宿もちっとも大変じゃなかった。
ヴォルフのおかげだ。
「ありがとう、ヴォルフ」
「クゥン?」
「もふもふであったかい」
国王陛下と泊まった離宮のようなふかふかな寝台はないけれど、代わりにヴォルフのあたたかい体温につつまれて眠れる。
寒さなんて感じないし、夜の暗闇もヴォルフがいれば何も怖くない。
「あと、果物もうれしかった」
いつもヴォルフは食料として、野生の獣を狩ってきてくれる。
しかも今朝は新鮮な果物を採ってきて、まるで贈り物の宝石のように恭しく差し出してくれた。
聖女の衣装を身に着けた時、本物の宝石を飾られたけれど、その時よりもずっとずっとうれしかった。
「大好き」
「キューンッ!!」
「あ、ヴォルフ、待って」
「ウッ」
わたしの顔を舐めるのを、ぐっとこらえて待つヴォルフ。