【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「そろそろあったかいお湯に浸かりたいなあ」

 王都を追放されてから、水浴びはしたけれど、湯浴みはしていない。

「ねぇ、ヴォルフ、さすがにお湯が出ているところはないわよね?」
「クゥーン?」
「あたたかいお水が湧いているような川や湖ってある?」

 ヴォルフはしばらく考えていたが、何か閃いたようにわたしを見た。

「キュン!」
「あるの? わぁ、うれしい。湯浴みがしたかったの」
「キューン、キューン」

 俺も楽しみとか、俺も入ってみたいとか言っているような気がするけれど……、狼もお湯に浸かったりするのかしら。





 * * * * *





 ヴォルフと一緒だと、移動するのも楽ちんだ。
 障害物の多い森の中や荒れ地は、ヴォルフが大きな背中にのせてくれる。わたしを落とさないようにそろそろと歩いているのがわかって、気持ちがあたたかくなる。

「ヴォルフ、大丈夫よ。わたし、仔狼じゃないのよ」

 今みたいに平らな歩きやすいところは、自分で歩く。
 ヴォルフは心配そうにわたしのまわりをぐるぐる回っている。母狼みたいでおかしい。

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