【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「でも、ここからは無理かしら。ヴォルフ、重くて申し訳ないけど、のせてもらえる?」
「クゥン!」

 喜んで、と勇んで背中を見せる。
 わたしはそうっとヴォルフの背にまたがった。

 ヴォルフは優しい。
 わたしみたいな人間を、どうしてこんなに甘やかしてくれるの……?
 
 わたしをのせたヴォルフは森の中に入っていった。
 深淵の森ほどではないけれど、鬱蒼と樹木が生い茂っている。木の枝が顔にあたるので、ヴォルフの背中に上半身を伏せた。
 頼り甲斐のある、大きなあたたかい背中だった。





「うわぁ、凄い!」

 深い森を抜けると、ぱあっと視界が広がった。

「綺麗な湖……」

 低い丘や木々に囲まれた広い湖が、空を映して碧く輝いている。

 湖の中にはぽつりぽつりと島が浮かんでいた。木が一本だけ生えている小島から、家が建てられそうな大きな島まで、いろんな形の島がある。
 湖畔の一部は砂浜や野原になっていて、可愛らしい花が咲き乱れる花畑もあった。
 目を上げると、遠くには雪をいただいた山脈が連なっている。この世のものとは思えない絶景だった。

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