【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
4.純情美形 vs. 天然小悪魔
「おはよう、ヴォルフ。んー、いい朝ね」
「ク――――ン」
大きく伸びをして、朝の空気を吸いこんだ。
ヴォルフも前脚を伸ばして、ぐぐっと背中を反らす。
「クゥン?」
「あら、ばれてたの? 大丈夫、寝不足じゃないわ。それまではちゃんと寝てたんだから」
実は夜明けとともに目が覚めてしまったのだ。ヴォルフは気が付いていないと思っていたのに……。
夜空が次第に紺から紫へと色を変え、やがて丘の向こうに朝日がのぼり、湖がキラキラと光り出す。その光景を、眠るヴォルフのぬくぬくした毛にうずもれて、ずっと眺めていた。
とても満ち足りて幸せだった。
「よく寝ていたから、起こしたくなかったの。ごめんね」
「クゥン」
いいよ、と軽く言われて、頬を舐められた。
わたしもヴォルフのほっぺたにチュッと挨拶の口づけをした。
朝ごはんを食べてから確認しに行ったら、茶色かった川の水は無事元の白濁した温泉に戻っていた。
「素敵! ほんとに湯船みたいになってるわ」
ヴォルフの掘ったところだけ少し深くなっているから、浅瀬の一部が丸く切り取られているように見える。